砂沼を走るレジェンド
私のランニングのマイコースである『砂沼』だが、私が走っている時に必ずと言っていいほどすれ違うランナーがいる。
私は夕方に走るのだか、夕方といっても時間はまちまちである。
仕事が早く終われば6時前には走り始めるし、残業すれば8時近くから走る時もある。
しかし、そのランナーは私がどの時間に走り始めたとしても、ほぼ毎回すれ違う。
確率でいうと70%以上はすれ違う。
『何時間走っているんだ!?』
と言いたくなるほどの確率である。
そのランナー。私より20歳以上は上であろう。
私は今30歳なので、そのランナーは50歳以上だと思われる。
50歳以上といってもランニングをする足どりは軽く、軽快にスタスタと進んでいく。
ペースは決して速いとは言えない。ただ、足どりは間違いなく軽い。
おそらくベテランランナーであろう。
そんなベテランランナーの事を、私はいつからかこう呼んでいる。
『砂沼のレジェンド』
呼んでいるっていうのは嘘だ。まだ話した事は無い。
私が勝手に『砂沼のレジェンド』と、心の中で命名しただけである。
そんな砂沼のレジェンドだが、おそらく彼も私のことをこう思っているはずだ。
『コイツいつもすれ違うな、、』
あまりにもすれ違う日が多いので、二人の間には暗黙のルールが出来ている。
そのルールと言うのは、
『砂沼のレジェンドは内側を走り、私は外側を走る』だ!!
砂沼は周回コースになるので、すれ違う時は必ずどちらかが内回りになり、どちらかは外回りになる。
ここ数年、ほぼ毎日のようにすれ違っているので、いつの間にかこんなルールが出来た。
私がたまたま内側を走っている時に砂沼のレジェンドとすれ違う時は、私が外側に回る。
逆に、砂沼のレジェンドが外側を走っている時に私とすれ違う時は、砂沼のレジェンドが内側に回る。
まさに砂沼の奇跡である。
数年間もランニングコースですれ違うと、言葉を交わさなくてもお互いの気持ちが分かるようになっているのである。
そう、、
この気持ち、過去にも体験したことがある。
体験した事があったが、それがいつ体験した事なのかは忘れていたのだが、
今日になって思い出したのだ。
それは、、、
『レンタルショップのアダ○トコーナー』である。
見ず知らずの男達が、同じ目的でその場所を訪れる。
そんな空間には、独特の雰囲気がある。
お互いに決して目を合わせる事はしない。
すれ違う時は、相手の行動を予想して素早く避ける。
そこには、すれ違う相手への敬意、尊敬、そして同士であるとの認識から起こる体の反射である。
好きなジャンルがあるとしよう。ランで言えばLSDが好きな人。ジョグが好きな人。インターバル走が好きな人。。
好きなジャンルについては理解しあえない部分もある。もちろんそこは人それぞれの慣性があるかである。
しかし、その空間には同じ目的で集まった同士が揃っている特別な空間だ。
好きなジャンル以前に、目的は同じということだ。
話さなくても、お互いの気持ちが分かりあえる。
これぞ『奇跡』だと私は思う。
話が長くなってしまったので、ここらへんでまとめようと思う。
砂沼のレジェンドに話しかけるタイミングがあれば聞きたい。
『毎日何時間走ってるんですか?』
終わり。